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『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』の上映に向けて再始動した公式サイト限定のスタッフインタビュー企画。通算第8回目の今回は、総作画監督を務める業界屈指のアニメーター後藤隆幸さんに、お話を伺いました。
僕自身は石黒監督版には参加してないのですが、同じ年代の人や一緒に仕事をしたことのある人たちが演出や作画監督などで参加していたし、当時も気にはなっていました。特にキャラクターデザインの奥田(万つ里)さんは、タツノコ(タツノコプロ)で一緒だった時期もあったので。奥田さんの絵は線が多いし「大変そうな作品だな」と思いながら見ていました(笑)。(作品の内容に)深く触れたのは、『Die Neue These』の制作が決まってからでしたね。
僕は(Production I.Gの)役員なので、ウチで『銀英伝』をやることは、自分が参加すると決まる前から知っていたし、多田(俊介)さんが監督をやることも聞いていたんです。多田さんとは『黒子のバスケ』でも一緒にやっていたので、その流れで僕も参加することになるのかなと思いつつ、「大変そうだなあ」と思っていました(笑)。どうしても、石黒監督版の時の印象があったので。
まあ、そうですね(笑)。でも、このご時世、『銀英伝』よりも大変な作品もたくさんあるでしょうし、この作品だけが突出して大変ということはないのですが。(総作画監督として)自分が任せられた役割は、人間芝居やセリフも多い中で、しっかりとキャラクターを描いていくということなので、すごくきっちりと作っていかなくてはいけない作品だと思っています。
作品を作っていくうえで大事な事の一つは、作画の全体を見れてまとめていく中心的な人を据える事なんです。なので、最初に僕が多田さんから言われたのは、「作画の核となる形で最初から作品に入って、作画全体をまとめて欲しい」ということでした。
例えば、ラッシュでの(作画スタッフへの)リテイク出しの時も、表情や演技に関して「ここはこうした方が良いんじゃないか」といった話はどんどんしますし、作画をしている際、画的なことについて思ったことがあれば、演出さんのところに行って、こちらからの意見も積極的に出すようにしています。もちろん、演出さんの意図していることの邪魔にならない範囲でですけどね。打ち合わせの段階でも、「そういう演出意図があるなら、こういう画にするのも良いのでは?」といった提案もしています。他の作品では、ここまで積極的に意見を言うことはあまりないのですが、この現場では、それが求められているというか。そこにも、自分が『銀英伝』に入っている意味があるのかなと思うので。まあ、口うるさい総作監という感じですかね(笑)。
内容やその時の制作状況にもよるのですが、一応、制作側では、ここは菊地さん、ここは僕みたいな若干の振り分けはあって。最近は同盟側が多いですね。とはいえ、帝国側をまったく描いてないわけでもありません。第2シーズンでも、作監(作画監督)や原画もやっているので、総作監べったりという形ではないですし。ただ、自分としては、もうちょっとラインハルトも描きたいな、と思ったりもします(笑)。
たくさんのおじさんが出てくるので、やっぱり(キャラクターが)濃いめのキャラは特徴を付けやすいですよね。逆に、薄いキャラは、久しぶりに描くことになると「どんな感じだったっけ?」ってなったりもします(笑)。具体的には誰かなあ……。ビュコックとかですかね。まあ、僕に、よく回ってくるからってこともあるんですけれど。(ビジュアル的には)すごい特徴があるわけではないのですが、味のあるキャラクターなので、そういったところを上手く出さなくちゃな、と思いながら描いています。
たぶん、それは観てくださっている方と同じじゃないでしょうか。観ていて良いシーンだなと思ってもらえるところは、我々も良いシーンだなと思っているだろうし。大変そうなシーンは、たぶん観た印象のまま、大変だと思います(笑)。ただ、総作監として、アップのカットの情報量は少しでも多くするように心がけていて……あ、もちろん、引きのカットは情報量を少なくして、パパッと描いているという意味では無いんですけれど。特にラインハルトなどのアップのカットは、なるべく情報量を多くするようにしています。だから、そういうカットは大変です(笑)。それは自分だけの話ではなくて。総作監が線を増やすわけだから、動画スタッフも大変になってくるんですよね。あと、階級章はリテイクが多いポイントですね。
そうですね。あとは、描くサイズごとに、どの程度まで省略して描くのかというパターンを3種類くらい決めてあるのですが。画面がFIXしている(動かない)時は、もう少し描き込んだ方が良かったりもするので。そういう細かい部分まで直したりすることは、この作品ではよくある作業です。
僕たち(制作スタッフ)は、基本スタジオに籠もって作業しているので、ファンの方と触れあうことって、基本的にトークショーやサイン会しかないんです。だから、非常に嬉しい機会でした。怒られたり、卵投げられたりしたら、どうしようとも思いましたが(笑)。トークショーは、どういうお話をすれば皆さんに楽しんでもらえるのかな、などと考えながらやっていて。僕たちは楽しかったのですが、来てくださった方々が実際にどう思われたのか、逆に気になるところですね。
第1シーズンでは、帝国と同盟のそれぞれがどういう状況で、というところから始まっていたのですが。ここからの12本(全3章)は、第1シーズンの12本よりも、物語的にさらに動いていくのかなと思います。その中で、キャラクターたちの人間味というか、苦悩などももっと見えてくる。そういう部分は変化なのかなと思います。ただ、作画的な方向性などでは、特に変えたことはありません。
すごく嬉しいですね。第1シーズンの時から、この作品はぜひ劇場で観て欲しかったんです。テレビ画面のサイズで観るよりも、大きなスクリーンで観ていただいた方が、より楽しんでもらえる作品だと思っています。
『銀河英雄伝説Die Neue These』に関しては、まだ原作のどこまで作ることができるのか分からないのですが、もし最後まで作れるのなら、ライフワーク的な作品になるのかな、というのが一つ。あと、僕も来年には60歳になりますし、この作品が続いていくのであれば、最後の仕事になるのかもしれないな、とも思いながら、描いています。目の前にある仕事をとにかく全力でやっていくということは、どの作品でも変わらないんですけれどね。
第2シーズンを楽しみにしてくださっている方は、第1シーズンも観てくださっていたと思うのですが。その期待を裏切らないような出来になっているはずなので、ぜひ劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。全3章あるので、その都度、足を運んでいただくのは大変だとは思いますが、きっと楽しんでいただけるはずなので。
[取材・文=丸本大輔]