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ラインハルト役 宮野真守さん
ヤン役 鈴村健一さん
キルヒアイス役 梅原裕一郎さん
『銀河英雄伝説Die Neue These』のメインキャスト3人による初めての鼎談が実現。ラインハルト役の宮野真守さん、ヤン役の鈴村健一さん、キルヒアイス役の梅原裕一郎さんに、オーディションの思い出や役に対する思いなどを語りあっていただきました。
鈴村:随分前なんですけれど、業界内で『銀河英雄伝説』がまたアニメ化するらしいという噂はあって。石黒監督版の『銀英伝』は、当時、出ていない声優はいないというくらい大勢の声優が出て「銀河声優伝説」と言われていたくらい伝説級の作品だったので。それをまたアニメ化するなんて、すごいなと驚いたし、自分が関わるとかは全然考えていなくて。「誰がやるんだろう? 大変そうだな」と思っていました(笑)。
宮野:石黒監督版の制作されていた頃はまだ子供だったので、作品の内容に触れたことはなかったのですが、伝説級の作品ですし『銀河英雄伝説』というタイトルは、もちろん知っていました。鈴村さんが言ったように、僕も業界のざわつきを感じていたし、「ラインハルトは宮野君なんでしょう?」とか言う人もいたりして。当時はまだ何のお話も来てなかったんですけどね(笑)。それから結構時間が経って、もう誰かに決まっているんだろうなと思っていたくらいの頃に、オーディションの話をいただいたんです。
鈴村:俺もそうだった。自分のところに話が来たのは、もう誰かに決まっているんだろうなと思ってるような時期だったよね。
梅原:僕も宮野さんと同じで、オーディションを受けさせていただけることになるまでは、『銀河英雄伝説』という名前だけを知っているような状態でした。原作の小説が始まった時は、まだ生まれていないので。
鈴村:え? マジで? 僕は、1回だけだけど、石黒監督版に出たことがあるからね(外伝2 『螺旋迷宮』 第7話に出演)。
宮野:そうなんですか?
鈴村:まだ本当にぺーぺーの頃で、名前も無い役だったけど。
鈴村:事務所の人から聞いた時は、名前の無い役とはいえ「俺、『銀英伝』に出られるのか! 『銀河声優伝説』の中に名前がクレジットされるんだ!」と思って、すごく嬉しかったんです。でも、スタジオへ行ったら「銀河声優伝説」の人たちは誰もいなくて、抜き録り(個別に収録すること)だったんですよ(笑)。それから数十年が経ち、去年の発表イベントで、(石黒監督版でラインハルトを演じた)堀川りょうさんとお話ししたら、「『銀英伝』はいつも抜きだったんだよね」と言われて、すごく衝撃を受けました。
鈴村:あ、そうだったかも! 孝宏とはアフレコも一緒にやったかもしれません。しかも、今、『Die Neue These』を録ってるのと同じスタジオでしたね。
宮野:オーディションのお話をいただいた時は、「あ! あの噂のー!」って(笑)。その後、原作を読み、作品の素晴らしさを十分に感じた上でオーディションに臨みました。オーディションの時から、多田(俊介)監督と三間(雅文)音響監督の熱意がものすごくて。役者として絶対に成長できる作品だし、なかなか味わえないものがいっぱい味わえる現場なのだろうと感じたし、どんな形でも良いから携わりたいなと思いました。
梅原:僕はオーディションのお話を頂いた時には、自分が受かるとはまったく思っていなくて。きっとベテランの方々で、素晴らしい作品を作られるんだろうなと思っていました。
宮野&鈴村:あはは(笑)。
梅原:そうしたら、まさか……(笑)。オーディションは、最初にテープオーディションがあって。その後、スタジオでのオーディションがあったのですが、さらにもう1回、スタジオオーディションがありました。
鈴村:そんなにあったんだ? 俺、全然やってないよ。
宮野:ヤンウェンリーはやってないんですよね。ラインハルトとキルヒは掛け合いで、ずっとオーディションをやっていたんです。
鈴村:俺、ヤンしか受けてないから、知らなかった。
梅原:それで、最後のオーディションでは、宮野さんと僕の組み合わせで受けさせていただいて。
宮野:そういう組み合わせが何組もあって。その組ごとの戦いなんだよね。
鈴村:じゃあ、宮野君と梅原君はオーディションからチームだったんだ?
梅原:そうなんです。
鈴村:面白い! 緊張するけど、一人じゃない感じは良いなあ。
梅原:宮野さんとガッツリお芝居させていただくのは久しぶりでしたし、三間さんの現場も初めてだったので、すごく緊張しました。
宮野:梅ちゃんは、オーディション会場のソファに座っているときも、今みたいにクールだったんですけれど。聞いてみたら「実はすごい緊張しているんです」って。「絶対、嘘だろ? 緊張する人だったの?」って(笑)。
鈴村:見た目、分かんないよね(笑)。
宮野:たしかに、待ってる間もセリフはぶつぶつ言ってたけど、あれは緊張してたんだって(笑)。
梅原:めちゃくちゃ緊張してました(笑)。でも、オーディションの段階からすごく楽しくて。ぜひまたこの役をやりたい!と思っていたので、受かった時はすごく嬉しかったですね。
宮野:オーディションなのに、本当に細く細く演出してもらえるんですよ。
鈴村:いいなあ。俺の場合は、テープオーディションだけだったので。一応、マネージャーも見てくれるけれど、「このシーンはこうだから、このセリフはこういう感じで」みたいに自分で演出をつけて。自分の中では、「これでダメだったら、ご縁がなかったんだな」と思えるところまで考えて作ったテープを提出しました。そうしたら、驚くほど早く返事がきたんですよ。2週間かからなかったくらいかな? ラインハルトたちは1年くらいオーディションしているという噂を聞いていたので、返事の速さにビックリしたのを覚えています。すごく嬉しかったですね。
宮野:壮大なスケールの作品ですが、人間物語であり会話劇で、人間のなんたるかを見せていく作品なんですよね。だから、自分の役や周りの状況をしっかり理解していないと立ち向かっていけないくらい内容が濃いんです。さらに、僕の場合は、最初の方で戦う相手は、本当に大御所の方々が演じていらっしゃるのですが、それでも負けてはいけないという思いがあったというか……。そもそも、ラインハルト自身にはまったく負ける気がないので、僕が負けちゃいけないんですよね。そういう気持ちで臨むことは大変と言うか、気合いの入るところではありました。普段の現場ではお会いできないような大御所の方々もいらっしゃるのですが、そんな方々の中で真ん中に立たせていただくには、非常にエネルギーが必要で……。毎回、戦っているし、自分も「銀河声優伝説」に足を踏み入れたのだなと実感しています(笑)。
鈴村:ラインハルトが若くして成り上がっていくのに対して、ヤンは成熟した人間が成り上がることをせず、巻き込まれていく感覚。本人は、それを俯瞰して見ているところが、演じていてすごく難しいんですよね。達観し過ぎて、他人事みたいになっちゃうことがあるんです。でも、ヤンは、巻き込まれてはいるんですけれど、自分はこうしたいという主観性もちゃんとある。とはいえ、俯瞰はしていなくてはいけない。そんなすごく難しい立ち位置のキャラクターで、シナリオの捉え方を本当に何ミリか変えるだけで、全然違ってしまうんです。熟練度が高すぎたり、強くなりすぎたり、逆にやる気がなさ過ぎたり、弱く見えたりするのですが、そのどれでもないのがヤン。ちょうどその中庸にいるように存在していないといけないのが非常に難しいです。ただ、原作を改めて読み直して思うのは、大勢のキャラクターの中でも、僕はやっぱりヤン・ウェンリーが一番好き。難しいからこそ、この役をやりたいとすごく思ったし、役者をやってきて良かったと思える役に出会えたことは幸運です。
梅原:今回のアニメでも、ラインハルトとキルヒアイスの少年時代は描かれているのですが、二人の関係性は、ある意味で分かりやすいんですよね。二人とも(ラインハルトの姉の)アンネローゼという人物が大事なんです。二人の思いは、そこから始まっているので。
宮野:そうそう。僕らはすべてが姉上のためだから、そこは分かりやすい。
梅原:そうなんですよね。だから、演じるときもそこを主軸に考えるというところでのやりやすさはありました。あと、キルヒアイスは、ラインハルトやヤンにも匹敵するような才能は持っているんですけれど、決して自分が頭に立つことはなくて。ラインハルトを補佐する位置に自分の居場所があると思っているんですよね。オーディションの時からディレクションとして「決してラインハルトよりも前に立たないで欲しい。ラインハルトを諌めるシーンであっても、上からにはならないで欲しい」と指示をいただいていて。そこが彼のアイデンティティなのかなと思います。あと、本当に頭の切れる人物なので、台本を読んで、自分の感じたその通りの芝居をしてしまうと、「そうじゃないよ」というディレクションがあったりするんです。例えば、ラインハルトのことを心配するシーンがあったとしても、キルヒアイスは(そのシーンよりも)もっと先のことを心配していたりする。どんどん先を読める人なので、そこは演じていて本当に難しいです。自分よりも頭のいい役を演じるのって、こんなにも難しいんだなって思っています(笑)。
宮野:それは僕も思う(笑)。あと、三間さんからは、「君ら二人の信頼関係が大事だから」って、ずっと言われてるよね。
梅原:言われてますね。
宮野:毎回、確認される。「どう?」って(笑)。
梅原&鈴村:あはは(笑)。
宮野:伝説級の作品がこうしてまた新たに始まり、そこに自分も身を置けること自体が幸せです。非常に奥深い作品ですし、全身全霊をかけて集中して臨まないと掴めない役だと思っています。でも、それは自分一人だけでやろうとしてもできないこと。特に、今回は会話劇でもあるので、自分でしっかり考えつつ、大先輩方の胸をお借りしながら、ラインハルトという役に臨んでいけたらと思っています。僕らの本気を感じてもらえる作品になっていると思うので、ぜひ楽しみにしていてください。
梅原:キャスト陣もスタッフさんたちも全身全霊をかけて本気で作っていることが現場からもひしひしと伝わってくる作品です。僕自身、今の自分が持っている中で一番良いものを出したいと常に思って収録に臨んでいます。石黒監督版を観ていた方にも観ていただきたいですし、今回初めて『銀英伝』という作品に触れる方にとっては、僕らの『銀英伝』がその人の最初の『銀英伝』になるわけですよね。そのことはやっぱり嬉しいですし、責任も感じます。多くの人に見て頂きたい作品ですし、僕自身もオンエアを楽しみにしています。ぜひ応援よろしくお願いします。
鈴村:新しい『銀英伝』を作ることがどれくらい大変なことなのかは、現場のみんなが理解していて。だからこそ、本当にすごい熱量で細かいところまで考えて、一生懸命作っています。石黒監督版は間違いなく完成された作品で、きっと、当時、ものすごい熱量で作られたのだと思うんですよね。僕たちは、今、同じスタート地点に立っているわけなので、石黒監督版を越えたいとかではなくて。リスペクトしつつ、今、僕たちにできる最善の力を尽くして作った『銀英伝』がどんな作品になるのかを、お見せしたいという気持ちです。なので、大いに見比べていただきたいとも思っています。まあ、こんなことを言いながらもすごく緊張していますし、ドキドキが止まらないんですけれど(笑)。でも、『銀英伝』は、そのぐらいの覚悟と勇気を持って一歩を踏み出さないといけない作品だと思っています。石黒監督版が好きだった方にも観ていただきたいですし、『Die Neue These』で『銀英伝』を初めて観た方に「石黒監督版も観たい」と思っていただけたら、僕らとしてはそれが一番幸せなこと。高い志で作品を作っていきますので、応援のほど、よろしくお願いします。
[取材・文・写真=丸本大輔]