12月6日(火)に東京の新宿ピカデリーにて、『銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀』第三章のスタッフトーク付き上映会を開催いたしました。
モーショングラフィックを担当されている青木隆さんと、策謀では2回目の登場となるCGIプロデューサーの田中宏侍さんが登壇した、スタッフトークのレポートをご紹介します。
郡司Pに呼び込まれ、青木さんと田中さんが登壇し挨拶を終えると、“モーショングラフィック”をテーマにトークが繰り広げられました。
↓以下、本編のネタバレを含みます。
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“モーショングラフィック”はノイエ銀英伝においては、戦況図や、ヘッドアップディスプレイ、戦艦内のオペレーター席のモニターのなどに使用されている映像技術です。
田中「ノイエ銀英伝で艦隊戦を表現する上で3DCGだけではお互いの陣営の戦況を分かりやすく表現するのは難しく、演出する上でもモニターグラフィックスの重要度が高かったのですが、青木さんであればその諸々を高いレベルで作成頂けるので、今回青木さんにお願いが出来たので表現の成功率をグンっと上げる事が出来ました。」
最初に、第一話に登場した艦橋ホログラフの説明から始まりました。青木さんにメインに制作していただいたのが、艦内で帝国軍と同盟軍の戦況を表示する艦橋ホログラフだそうです。
動画:艦橋ホログラフ
青木「艦橋が少し薄暗くて、戦況図が光源となるようなショットを想像して作成しました。劇中で見ている人に戦闘状況を伝えるインフォメーションの役割を担うだけではなく、キャラクターにカメラを向けた時に、画面の後ろに見えていても、背景美術物としてきれいに成立するようなバランスを目指しました」
田中「青木さんは元々アニメの撮影も担当されていることもあって、画面から逆算したモニターグラフィックを作成できる稀有な方なんです。なので、モーショングラフィック単体ではなく完成画面全体の見栄えも考えて作成してくださっています」
画像:同盟軍 艦橋ホログラフ 初期デザイン
青木「引きで見た時のシルエットの差を、帝国軍と同盟軍では徹底的につけたいと思って作成しました。帝国軍は、スフィアホログラフィックを参考に球体にしました。日常で使う端末に関しても球体にしています。反対に、同盟軍は四角っぽいデザインから組み立てました。
また、アイコンの色は敵軍を赤に設定するのが一般的ですが、どちらの軍から見ても帝国軍は赤、同盟軍は青で統一しました。帝国軍と同盟軍の戦況図が切り替わった時に、お客さんがこんがらがらないように配慮しています」
田中「帝国軍も同盟軍も使用しているホログラフは違いますが、同じ人類同士で戦っている話なので、異星人が作ったような全く別の星の技術にはならないように気をつけていただいています。」
そして、操作パネルの話題に展開されていきました。
画像:ガイエスブルク要塞の操作モードを切り替えているパネル 完成画面・パネルのレイアウト案
青木「このシーンには、どういうパネルがあったら伝わりやすいかを考えて、第37話の演出担当の小笠原さんに提案しました。ここはケンプがガイエスブルクの制御室のトップビューで、操作権限を艦長席に移行する作業をしているところです。オペレーター席をバツ印にしていって、最後に艦長席がオンになる設定でケンプがこれから一人で操縦することを表現していきました」
田中「あくまで主役はキャラクターなので、主張し過ぎないようにバランスを考えていただいています。“俺のモニターグラフィックスを見てくれ!”という感じではなく、最終的な画面の見え方を逆算してくださるので、安心して作業を任せられます」
青木「作り込んでぼかして背景物としてきれいになっていればいいや、と思っている部分もあるんです。メインを引き立たせるライティングのワンパーツとして、構成要素になってもいいと思って作っています」
続いて、戦艦内のオペレーター席のモニターの設定の話に移りました。
画像:帝国軍 艦橋 オペレーター席
画像:同盟軍 艦橋 オペレーター席
青木「ノイエ銀英伝ではオペレーターを映すことは多くないのですが、一つひとつのモニターの役割を決めて、こういう機能が備わっているということを僕のほうで決めて作りました。大型戦艦を操縦する際に、こういう機能があったらいいんじゃないですかという提案を行いました。新しいコンテを描く時にもこういった指針があれば、オペレーターとモニターの生合成が合うように調整もしやすいのではないかと思いました」
郡司P「アニメーションって物凄い数の設計図があるわけではなくて、いろんな人のアイディアがどんどん取り入れられていって完成していく場合が多いんですよね」
田中「そうですね。作品ごとや集まるスタッフによって、それぞれ作り方が変わっていきます。これは日本のアニメーションの特徴かもしれませんね」
他にも様々紹介していただきましたが、あっという間に時間は過ぎて、締めの挨拶のお時間となりました。
田中「こういう機会を設けていただいて皆様のお顔を見ながら、携わったスタッフの苦労話とかできることはすごく有難いです。まだ続きを作っていきたいなと思っておりますので、引き続き応援していただけたら嬉しいです。本日はどうもありがとうございました」
青木「ちょうど第三章は、去年の年末あたりに作成していました。かなり作業が大変だったこともあって、年を越した時にモニターグラフィックを何枚くらい作成したのか数えてみたんです。そうしたら、自分で手を下したカットが1212カットありました。今まで携わった作品の中でも一番多くなっているので、この記録を更新し続けられるように、できる限り最後までついていきたいと思っています。どうか宜しくお願い致します」
この日一番の拍手に包まれながら、お二人は降壇されました。
郡司P「さまざまな方に色々な話を伺うスタッフトークとして少しは作業の工程みたいなものをご理解いただけたと思います。作品はいろんな方の力が集結してできております。エンドロールを見るたびに、その人たちのことを思い浮かべていただけると大変嬉しく思います。本日はありがとうございました」
この日で策謀のスタッフトークのMCを務めるのが最後となる郡司Pからもご挨拶された後、イベントは終了いたしました。