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1月16日(火)からの日本テレビでの放送スタートを記念して、多田俊介監督に改めてインタビューしました。終盤は、『銀河英雄伝説Die Neue These(以降、ノイエ銀英伝)』の48話までのネタバレも含んだ内容になっています。
僕の方からは、新規の映像など新しい何かをお客さんに提供できない状態でしたから、ある意味、僕もお客さんとして会場へ行ったのですが、客席で声を出して笑いながら観ていました。『銀河英雄伝説(以降、銀英伝)』という作品は、その内容や歴史も相まって、作っている側も観ている側もついつい格調高い作品と捉えがちで、コメディの方向へ振りにくいところもあると思うんです。でも、キャストの皆さんの弾けっぷりは、そこを突き抜けていて(笑)。とても面白かったですし、すごく良いファンイベントになったと思います。
良いリアクションがあったら嬉しいなとは思っていたのですが、皆さんの歓声の大きさは想像以上。すごく気持ちが高揚したし感動的でもありました。
1話完結のファミリー向けコンテンツで、いわゆる長寿番組の作品を除けば、今の時代に在京キー局で4クール通して放送していただけるのは非常に稀なこと。しかも、「TVer」さんで配信されるということは全国の方に観ていただけるわけですから、実質、全国ネットのようなもので、とてもありがたいです。
年明けにスタートして暮れまで、まさに某局の大河ドラマのように毎週毎週、物語を積み重ねていけますよね。『銀英伝』という作品は大河ドラマなので、元々、そういう形で楽しんでほしいコンテンツ。この機会に1話から48話までを毎週続けて観るという体験をぜひ多くの方にして欲しいです。きっと良い感想をもらえると期待しています。
何十年かぶりの映像化ですし、著作権などの兼ね合いもありますので、石黒監督版でやったことをそのままやることはできないわけです。監督も制作会社も違うのですから、それは当然だし、やるべきでもないですよね。でも、『銀英伝』の本質的なところを変えてはいけない。これは、原作のファンであり石黒監督版のファンでもある僕としても絶対のことでした。例えば、キャラクターは同じだけど性格設定が違うとか、ストーリー展開が違うとか、そういう作品にすることは、まったく考えていなかったです。では、変えないけれど、真似をするべきでもないという中で、どう作っていくかという自分なりの方針については、かなり考えました。そこで決めたのが、「何年に何々の戦いがありました」「何年に誰々が死にました」と絵巻物の順番のようにカメラを向けていくよりは、なるべく登場人物がカメラを持って移動するように作るということです。
そうですね。例えば、最近の某局の大河ドラマなどに関しては、「ナレ死」という言葉もありますが。
絵巻物的な作品の場合、「ナレ死」で全然良いんですよ。ただ、我々はなるべくキャラクターにカメラを持たせると決めた以上、そこを描写していきたい。そこは過去作品と差別化できているところなので、ある意味、持ち味としてシナリオや映像を作ってきました。
とにかく、原作の『銀英伝』が大好きということが大前提としてあるんですけど。例えば、全部を映像化するのは時間的にも予算的にも無理だから、美味しいところをかいつまんだファンムービーみたいにしてほしいという企画だったら、そこに目標を定めて短い期間で目標を達成することはできたんです。でも、『ノイエ銀英伝』では、私も含めて、みんなが暗黙の了解として、「原作の10巻を全部やる」と思っている。そういうタイトルだから、本当にProduction I.Gらしい良いコンテンツに仕上がったのかどうなのかという評価は、全部作り終えるまで結論が出ないんですよ。全部やること前提で構成しているので。だから、僕としては、何があっても面白いまま10巻全部をやりきるという気持ちをずっと持ち続けていなければいけない作品。遠く高い目標をずっと掲げている感覚です。
そうですね。ただ、ここは言い方を間違えると、他のタイトルのプロデューサーたちから怒られてしまいそうです(笑)。当然、自分が関わるすべてのタイトルに対して、いつも全力で取り組んでいるんですよ。でも、ぶっちゃけて言ってしまうと、ずっとどこかに『銀英伝』が存在している感じはあります。
とにかく皆さんにアピールしたいのは、長い間、数多くの人に読み継がれ、楽しまれてきた『銀河英雄伝説』には、ドラマとして面白い要素が全部入っているということです。例えば、宇宙戦艦が戦っている部分に関してミリタリーファンの人ほどは理解してなくて、「カッコ良いね」くらいにしか思っていない人でも、それ以外に楽しめる要素が数多くあります。宮廷物語でもあるし、ある意味、青春物でもある。スパイ物の要素もアクションもあります。とにかく、観始めたら楽しい要素は盛りだくさんなのですが、その中でも、やはり特に魅力的なのが群像劇の要素。大勢の魅力的な登場人物がいるので、観始めて銀河帝国や自由惑星同盟のストーリーに触れることで、その中で誰か一人はマイフェイバリットな登場人物、最近の言い方で言えば「推し」が必ず見つかります。誰もが必ず楽しめる要素があるので、物語の始まりから観られるこの機会にぜひ楽しんでください。
最初にも言いましたが、48本の続き物としての醍醐味を楽しんでいただけることが嬉しいですね。特に、34話からの『要塞対要塞』のエピソードは当初の構想よりも1本伸びてしまって、途中で「続きは半年後」みたいになってしまっていたので(笑)。そこに限らず、(4本ごとに)途中で区切れてしまっているため、結末を見せてないような形になることがありました。でも、今回、毎週追いかけて観てもらえるということで、絶対に劇場で観たときとは違う感想を持ってもらえると思うし、楽しみです。
もちろんありました(笑)。最初から、今回のような形でテレビ放送されるのであれば、普通に続きものとして観ていただけたんですけど。劇場上映がスタートだったのに、あそこで区切れて「続きは半年後」というのは、本当に申し訳ない気持ちでしたね。
僕としては「ここを観てほしい」というよりも、皆さんそれぞれが好きなところを繰り返し観てもらえることが嬉しいです。映画館だと好きなところを観るために何回も入場料を払っていただく必要があって、そのこと自体、我々としてはとても有難いのですが、皆さんにはご負担をおかけすることになるので。でも、地上波で放送されることで、自由に何回も観ていただける。僕も自宅でアニメを観るときは、お気に入りのところを何回も繰り返し観ているので、よく子供に「同じところばかりダイジェストで観ないで、ちゃんと観せて」と言われます(笑)。でも、酒でも飲みながら好きなところを観るのが楽しいんですよね。皆さんにも、自由に楽しんでいただきたいです。
醍醐味は、長く続くシリーズは、ちゃんと何らかの結末が用意されているということだと思います。
やっぱり、なんとなく終わりましたという番組ではなく、しっかりとした結末があると、全部観終わったときに感じるものは全然違うと思います。だから、そこに至るまでの設計図は、常に大事にしていますね。それに、結末がきちんと設定されている長期シリーズって、キャストさんもすごく乗ってくるんですよ。1話で消費されるだけの単なる面白いキャラとか、毎回同じことしか言わないイケメンキャラとかではなく、登場人物にちゃんと変化があるので、キャストさんが自分で変化を作っていってくれる。ある意味、僕たちが全部の設計図を提示しなくても、キャストさんが勝手に作ってくださるところがあるので、視聴者の方たちが観ていても、より魅力的になっていると思います。
まず一つは繰り返しになりますが、48話を毎週連続で観ると、今まで劇場やBlu-rayなどのリリースタイミングでバラバラに観ていたのと違う感想を持つことができるはずです。「もう観てるし」と思わず、ぜひ日テレやTVerで毎週観ていただきたいなと思います。あとは、続編の制作が決定していることを公式に発表しておりますから、そこへ向けてのある意味で復習という形にもなりますよね。続編の方で、様々な変化を仕込んでいるところですから、その変化を感じるためにも、この機会にぜひ復習していただくのが理想的だなと思います。先日、あまりにも皆さんに観てほしくて、自分のX(旧Twitter)のアカウントで「1月から始まるよ」とアピールしたら、すごく大勢の方がリポストしてくださったんですよ。ファンの皆さんが、新規のファンを獲得するために手伝ってくださっていることを感じて、すごく嬉しかったです。ありがとうございました。
[取材・文=丸本大輔]